なるほど!ザ・ワード〜低公害車用語解説〜

自動車環境問題に関することばを取り上げて解説します。

第9回 メタノール

◆メタノールの特徴

メタノールはメチルアルコールとも呼ばれ、常温で無色透明な液体です。特異な香気があり、水にも有機溶媒にもよく混和します。接着剤、薬品、塗料、合成樹脂等の原料、あるいはウィンドウォッシャー液の成分として利用されますが、液体であるため自動車用燃料としても注目されています。自動車用燃料として用いた場合、ガソリンよりオクタン価が高くセタン価は低いため、火花点火方式のエンジンに適しています。ただし、メタノールは単位重量あたりの発熱量が軽油の約半分しかありません。したがって、ディーゼル車と同等の航続距離を確保するためには大型の燃料タンクが必要になります。メタノールはいろいろな物質に対する反応性が高いため、一部の金属を腐食させたり、また、ゴム材を劣化させるため、燃料供給装置には特殊な材料を使用する必要があります。さらに、メタノールには毒性があるため、毒物及び劇物取締法で管理されています。取り扱いには注意を要します。

■各種燃料の特性
各種燃料の特性

注)軽油、ガソリンは代表的な数値を示す。
出典:オランダTNO研究所

■オクタン価とセタン価

オクタン価は火花点火エンジンの耐ノッキング性を表す指標です。オクタン価が高いほど耐ノッキング性が優れています。ノッキングは異常燃焼の一種で、発進・加速時に「カリカリ」音で聞こえます。極端なノッキングの場合にはエンジンを破損する恐れがあります。
セタン価は圧縮着火エンジンの着火性を表す指標です。セタン価が高いほど着火性に優れ、セタン価の高い燃料はディーゼルエンジンに適しています。

◆生産・供給方法

現在、世界のメタノール生産量は年間約3,200万トンで、そのうち92%は天然ガスを原料としています。日本は全量輸入でまかなっており、年間の消費量は約183万トン(平成13年度)です。メタノールの生産は、一般的に水蒸気改質法によって行われています。また、再生可能エネルギーとして、木材等のバイオマスからメタノールを合成する手法の開発も進んでいます。
自動車用メタノール燃料は、関東、東海、関西圏を中心に14ヶ所あるメタノール供給スタンド(平成14年5月末現在)で供給されます。価格は1リットルあたり43円程度で取引されています。

◆環境への影響

メタノールをエンジンの燃料として燃焼させた場合、ディーゼルエンジンで問題となっているような黒煙や粒子状物質(PM)はほとんど排出されません。また、メタノールには硫黄分が含まれないので、酸性雨の原因となる硫黄酸化物(SOx)を排出しません。しかし、低温始動時をはじめ、エンジン運転時には、未燃メタノールや人体にアレルギー反応を引き起こすホルムアルデヒドが排出されやすいため、酸化触媒等による対策が実施されています。メタノールやホルムアルデヒドは反応性が高いため、酸化触媒により容易に除去することができます。

◆メタノール自動車の開発と普及状況

メタノールは石油代替のクリーンな液体燃料として有望視されてきました。1980年代〜1990年代初頭にかけて、主にディーゼル代替車として、メタノール自動車の普及に向けた開発がなされてきました。これまでの導入台数は、トラックを中心に累計576台となっています。
最近では、燃料電池自動車用の燃料としてメタノールが注目されるようになりました。メタノールを燃料電池用の燃料とする場合、改質器でメタノールから水素を取り出して利用します。また、メタノールを直接、燃料電池に供給し利用する方法も研究開発されています。現状では、水素を高圧ガスとしてボンベに蓄え車両に搭載する方式が実用化されつつありますが、航続距離や燃料の積載性を考慮した場合、液体燃料の方が有利であり、これらの観点からメタノールは有望な燃料の一つとして考えられます。

メタノールトラック
メタノールトラック


ページトップへ
一般財団法人 環境優良車普及機構 〒160-0004 東京都新宿区四谷2丁目14-8 TEL:03-3359-8461(代表) FAX:03-3353-5439
Copyrightc 2012 Organization for the promotion of low emission vehicles. All Rights Reserved.