なるほど!ザ・ワード〜低公害車用語解説〜

自動車環境問題に関することばを取り上げて解説します。

第15回 GTL

◆GTLの特徴

GTLはGas To Liquid(ガス・ツー・リキッド)の略で、一酸化炭素(CO)と水素(H2)の混合ガス(合成ガス)を化学反応させ合成した液体燃料のことを指します。石油代替燃料の一つとして有望視されています。
GTLは製造工程によって、ガソリンに近い性質を有するものと軽油に近い性質を有するものができますが、ここでは、ディーゼルエンジンへの使用が期待されている軽油に近い性質を有するGTLについて紹介します。
GTLはセタン価※が非常に高く、自己着火性に優れるため、ディーゼル燃焼に適していると言えます。燃料中にすすや粒子状物質(PM)の発生原因となる硫黄分やアロマ(芳香族系炭化水素)分をほとんど含まないクリーンな燃料です。
しかし、潤滑性に乏しいことや、ゴム材の膨潤性が軽油と異なる等の性質があり、既販のディーゼル車にGTLを使用した場合の耐久・信頼性上の課題が発生する可能性があることが指摘されています。
※燃料の着火性の尺度。高いほど自己着火性が高い。通常の軽油のセタン価は50前後。


注)
・軽油、ガソリンの出典:オランダTNO研究所
・軽油、ガソリンの硫黄分は現在国内で流通しているものについて示した。
・GTLの出典:NEDO・ACEプロジェクト平成12年度報告書

◆生産・供給方法

GTLは石炭や天然ガスを原料として製造されます。工業的製造方法には、大別して直接合成法と間接合成法がありますが、現在主流となっているのは間接合成法です。間接合成法は、原料である石炭や天然ガスから、一旦、COとH2からなる合成ガスを中間体として製造し、それを合成して液化させる方法です。
合成ガスからGTLを製造する過程には、主にフィッシャー・トロップシュ合成法(FT合成法)が用いられています。このため、本方法により製造された軽油は、合成軽油のほか、フィッシャー・トロップシュ軽油(FTD)と呼ばれることがあります。
GTLの製造方法における課題は、エネルギー効率の改善です。原油から軽油を精製した場合のエネルギー効率は85%程度ですが、現状のGTL製造法におけるエネルギー効率は60〜65%であるため、エネルギーの損失が大きく、それに伴い二酸化炭素(CO2)排出量が多くなります。
しかし、既存のインフラ設備をそのまま使用できるメリットがあるため、市場導入が期待されています。

◆環境への影響

GTLをディーゼル車に使用した場合、燃料中に硫黄分やアロマ分をほとんど含まないため、PMの排出量は、軽油を使用した場合と比べて大幅に低減できるとの研究報告例があります。

◆GTLを燃料とする自動車の開発と普及状況

GTLは軽油に近い性質を有するため、CNGやDMEのような専用車の開発が不要で、既存のディーゼル車が使用できると期待されています。昭和シェル石油、シェル・インターナショナル・ガス、三菱商事および生活協同組合連合会・首都圏コープ事業連合の4社は、平成15年11月より、GTLを既存のディーゼル車に使用した実証試験を開始しました。試験期間は7ヶ月間で、車両の走行性や排出ガス特性などの検証が行われる予定です。

参考)
昭和シェル石油:http://www.showa-shell.co.jp/products/gtl/index.html
三菱商事:http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/bg/energy/approach.html
生活協同組合連合会:prw.kyodonews.jp/prwfile/prdata/0127/release/200312118715/kaiin.pdf


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