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世界の自動車用代替燃料

LEVOは、日本政府指定機関として参加している国際エネルギー機関(IEA)の自動車用先進燃料技術連携プログラム(AMF-TCP)で得られた情報等を出来るだけ早く皆様に提供しています。世界の自動車用代替燃料に関して、近年の状況はメールマガジンに提供していますのでご覧ください。 < メールマガジン 最新号
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2005年版

◆ 欧州各国におけるバイオ燃料の生産と優遇施策

 EUは世界のバイオ燃料開発の最先端である。バイオ燃料生産国は2004年には11ヶ国となり、同年1年間の域内におけるバイオ燃料生産量は、242万トン(2003年比25.7%増産)超となった。
 2010年末時点で全燃料消費に対するバイオ燃料の占有率を5.75%にするというEU指令の目標達成に向けて、さらなる増産が予想されるが、バイオ燃料生産量には各国の様々な優遇施策が絡んでいる。

[ フランス ]
 フランスは2001年にはEUの主要なバイオディーゼル生産国だったが、近年、生産量は減少を続け、2004年には前年比2.5%減の34万8千トンで、認可生産量*を下回った。一方、バイオエタノールは2003年の8万2千トンに対し2004年には10万トンを超えた。
 認可生産量を満たす量のバイオ燃料の流通を販売業者に促すため、2005年、財務法によりTGAP**が新たに導入された。これは販売業者が、1m3あたりに目標とする率(目標率)のバイオ燃料が混合されていることを証明すると免税されるもので、この目標率は、EU指令が定めるその年の目標値に連動し毎年上昇する。
 また2004年9月の首相声明で、バイオ燃料の認可生産量を2007年までに合計80万トンまで増やす計画が発表されたことを受け、バイオ燃料に対する優遇策は今後さらに進められると思われる。

* バイオ燃料に対する優遇税制により税収総額が減少することを防ぐため、財務大臣がバイオ燃料の生産量を規定している。入札によって製造業者を選定し生産を認可する。
** 「環境総合税」。大気汚染、家庭ゴミ、基油排出などへの課税を統合する形で創設され、2003年1月1日以降は石油製品にも適用されている。

[ イタリア ]
 イタリアのバイオディーゼル生産量は増加を続け、2004年には32万トンに達した(前年比17.2%増)。このうち90%は自動車用燃料である。しかし同国ではバイオ燃料の認可生産量とその割当を規定しており、2005年にはバイオディーゼルが10万トン削減される。するとその分バイオエタノールの生産割当が増加する。穀物とワインを原料とする国産アルコールを量産するイタリアにとって、主として輸入植物油を原料とするバイオディーゼルよりも、国産農産物を原料とするバイオエタノールの生産促進は、自国の利益にかなっていると言える。

[ ドイツ ]
 ドイツは前年に続き2004年もEU第1のバイオディーゼル生産国で、生産量は初めて100万トンを超え、EU全体の生産量の53.5%を占める。生産量急増には国による優遇策が寄与している。2004年1月1日、鉱油税法が改訂され、100%バイオ燃料、化石燃料混合のいずれについてもバイオ燃料への課税が全額免除されることになった。1999年に導入され、石油製品税に加算されるエコロジー税も、バイオ燃料については免除されている。

[ スペイン ]
 スペインはバイオエタノール先進国であり、前年の16万トンから2004年には19万4千トンとなった。フランスと同様にETBEに変換され、2004年には41万トン余りを生産した。スペインのバイオエタノールの生産増加には、ガソリン、軽油等に課せられる炭化水素税を、バイオ燃料については2012年まで100%免税とする政策が大きく寄与している。また、主に穀物を原料とするため、バイオエタノールの増産は低開発地域に農業生産と関連産業を創出し、また新しい環境技術を発展させることにつながる。

[ ポーランド ]
 ポーランドはEU加盟国の中で唯一、2004年のバイオエタノール対前年生産量が激減している(-40.7%、3万6千トン)。これは、2003年11月に投票が行われたバイオ燃料法を、翌年、憲法裁判所が裁可しなかったためである。同法はエタノール混合ガソリンの税控除を規定し、ガソリンの混合率と控除額を年度予算の可決後に年ベースで決定するもので、現在修正中である。

[ 総括 ]
 バイオ燃料市場は、免税措置と緊密に連携しつつ発達した点が他の市場と異なる。バイオ燃料の免税措置が、減収等、国の財政全般にも影響を与えるため、バイオ燃料の生産割当を規定する国もあり、バイオ燃料市場自体が閉鎖的になり、あるいは認可生産量の内訳をめぐってバイオディーゼル部門とバイオエタノール部門が生産割当を争う国もある。
 しかしEU加盟国には、バイオ燃料にいかなる生産制限も規定しないことが、欧州法により課せられている。つまり今日のバイオ燃料の生産割当規定は、すべて各国の政策的な措置なのである。ドイツとスペインはこの規定に沿って生産割当を行わないことにしたため、バイオディーゼル、バイオエタノールの両部門が急速に成長した。
 他のEU加盟国でのバイオ燃料産業の振興と、フランス、イタリア等での生産割当制度の廃止を併せれば、EU指令の目標値を達成することは難しいものの可能である。バイオ燃料市場には潜在力があり、業界も準備が整っている。残る問題は、政治的意志のみである。

EurObserv’ER "BIOFUELS BALOMETER - June 2005" より抄訳
http://www.energies-renouvelables.org/observ-er/stat_baro/observ/baro167b.pdf

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◆ ディーゼル車に対し競争力をもつ天然ガス車 〜米国の報告書から〜

[ 大型ディーゼル車と大型天然ガス車の2010年技術における コストに関するスタディ]
 天然ガス車は、生産台数が少ないことと燃料搭載システムが比較的高価なことなどから、一般的にはディーゼル車より高コストであると考えられている。しかし、カリフォルニアエネルギー委員会とカリフォルニア大気資源局(CARB)は、2010年の連邦政府およびカリフォルニア州の排出ガス規制に適合するために求められる先進排出ガス対策技術による追加コスト等により、ディーゼルエンジンは将来、さらに高価なものになるとしている*
 このような中、「2010年における大型ディーゼル車および大型天然ガス車の技術に関するコスト比較」と題した報告書が2005年7月に発表された。これは、カリフォルニア州南海岸地区大気質管理委員会(SCAQMD)および南カリフォルニアガス会社の依頼を受け、技術関連調査会社大手のTIAX LLC社が行った調査で、それぞれ排出ガス性能が同程度の3車種(ゴミ収集トラック、路線バス、および短距離トラック)の大型ディーゼル車と大型天然ガス車について、新規ユーザー(最初の所有者)のLCC(ライフサイクルコスト:平均寿命の間に発生する費用で、車両、燃料、運転及び保守等の費用)を評価したものである。
 同報告書によると2010年の排出ガス規制適合車の場合、同じレベルの装備を持つ車両の維持などに関連する年間平均コストについて、天然ガス車とディーゼル車の差は予測される燃料価格や車両の技術開発コストなどの差よりも小さく、天然ガス車は排出ガスが同程度のディーゼル車に対し、LCCの面で大きな競争力を持っていると結論づけている。
 具体的には2010年以降、ゴミ収集車、路線バス、およびクラス7/8**短距離トラックなどの天然ガス車について、石油価格が1バレルあたり31米ドルより高値となった場合、LCCはディーゼル車よりも低くなると予測されている。また、モデルを使ったLCCの試算において、ある特定の自動車用燃料が他の燃料に対して明らかな優位性を持つという結果は得られなかった。2004年排出ガス規制適合のディーゼル車が天然ガス車に対しコスト面で大きな優位性を持っているという現在の状況に比べ、「特定のものが優位性を持つとは言えない」という結論が出たことは、重要な結果といえる。

* 「石油依存低減のためのカリフォルニアの戦略(AB2076)」
   カリフォルニアエネルギー委員会・CARB(2001年12月)
** 最大積載量26,000lbs(約11.8t)超の重量車

[ コスト比較の前提条件 ]
 今回の比較分析に使用した大型天然ガス車および大型ディーゼル車は共に、2010年の米国環境保護庁(EPA)/CARBによる厳しい排出ガス規制に適合する技術が2010年時点で開発されていることを前提としている。年間平均コストの具体的な検証をおこなった3車種の天然ガス車について、車両、エンジンなどの条件は下表に示すとおりである。


 *3:hp=英馬力の1馬力、1hp=0.7457kw
 *4:1マイル=1,609m、1ガロン=4.4L
 *5:年間維持コストはディーゼル車・天然ガス車とも同等とみなす。

Comparative Costs of 2010 Heavy-Duty Diesel and Natural Gas Technologies Final Report より抄訳
http://www.tiaxllc.com/reports/HDDV_NGVCostComparisonFinalr3.pdf

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