■トピックス
★第46回東京モーターショー2019
〜環境優良車〔ハイブリッドトラック・バス、電気トラック、燃料電池トラック〕の出展〜
◆◆第46回東京モーターショー2019が開催◆◆
近年、温室効果ガスの排出低減に向けて、電気自動車が話題になっています。10月24日(木)〜11月4日(月)に開催された東京モーターショーでは、130万人を超える来場者があり、国内の大型4社が、電気トラックをはじめとする環境優良車を展示していました。LEVOは、東京モーターショーの電気トラックを中心とした環境優良車の技術に関連する展示を調査してまいりました。軽油に変わる代替燃料に関する技術としては、いすゞ自動車から天然ガス自動車に関するパネルの展示がありました。
以下に、国内の大型トラックメーカー4社の環境優良車の展示内容を紹介します。
◆◆いすゞ自動車◆◆
≪ハイブリッド連接バス「エルガデュオ」≫
いすゞ自動車は、日野自動車と共同開発を進めた国産初のハイブリッド連節バス『エルガデュオ』を出展しました。
いすゞエルガデュオは、全長18m、定員120名 (標準仕様、最大値)、最小回転半径9.7mと日本の道路事情に適した仕様となっています。連節器の破損を防ぐために警報音により注意を促す連節制御システムや走行中にドライバーが急病などで安全に運転できない状態に陥った場合に乗客や乗務員が非常ブレーキスイッチを押すと停止する装置(ドライバー異常時対応システム(EDSS:Emergency Driving Stop System))が装備されています。
ハイブリッドシステムは、総排気量8866cc日野自動車製A09Cクリーンディーゼルエンジンとハイブリッドモーターを組み合わせて省燃費を実現しながら高い動力性能を発揮します。このほかハイブリッドバッテリーで駆動する電動式パッケージクーラーなどの最新技術も採用しています。
ハイブリッド連接バス「エルガデュオ」
≪エルフEVウォークスルーバン≫
いすゞ自動車は、小型トラックのエルフを電動化したエルフEV ウォークスルーバンを出展しました。電気自動車の特性であるゼロエミッション走行や低騒音といったメリットに加え、EV化によってウォークスルー構造を実現しました。運転席を回転シートにすることで、ドライバーの車内移動を容易にするなど、ドライバーの負担軽減と効率的な集配作業を可能とした配送車両です。
安全面でも、従来のミラーより広い範囲を映すことができる電子ミラーシステム(CMS:カメラモニタリングシステム)や、車両の全周囲を確認できる3Dサラウンドマルチビュー(全方位モニター)を搭載し、ドライバーと周囲への安全をサポートする装置が備えられています。
エルフEV ウォークスルーバンの主要スペックは、リチウムイオン電池を搭載し、バッテリー容量は40kWh、80kWhの2タイプで、満充電当たりの走行距離は50km以上と100km以上で、最大出力およびトルクは110kW、305Nm、最高速度は80km/hです。充電方法は、普通充電とCHAdeMOによる急速充電に対応しており、最大積載重量は2トンです。

エルフEVウォークスルーバン
エルフEVウォークスルーバンの主要スペック
項目 |
仕様 |
バッテリー容量 |
40kWh/80kWh |
最大出力 |
110kW・305Nm |
走行可能距離 |
50km以上/100km以上 |
最高速 |
80km/h |
充電方式 |
普通充電・急速充電(CHAdeMO Ver1.2) |
≪天然ガストラックへの取組み≫
いすゞ自動車は、輸送用エネルギーの多様化や環境対応の観点から、天然ガスを重要な石油代替燃料の一つとして位置付けて天然ガス自動車を開発しています。「展示パネル」と「天然ガスとトラックがわかるタッチディスプレイ」には、開発中の極低温で液化した状態の天然ガスを燃料とする「液化天然ガス(LNG)トラック」等、天然ガス自動車の未来に向けての取り組みや技術方針が紹介されています。

「天然ガストラックの展示パネル」と「天然ガスとトラックがわかるタッチディスプレイ」
◆◆日野自動車◆◆
≪ハイブリッド大型トラック「プロフィア」≫
日野自動車は、2019年6月から発売されたハイブリッド大型トラック「プロフィア」を出展しました。
ハイブリッドシステムにより、積載性、航続距離、使い勝手はディーゼル車と同等のままでCO2排出量の削減と低燃費を実現しています。また、モーター走行は走行中の騒音や振動が低減するのでドライバーの疲労軽減に貢献できます。
これまでハイブリッドは、発進・停止の頻度が少なく定速走行が基本の高速道路の燃費向上につながらないとされていましたが、下り坂の運動エネルギーが大きいことを利用して標高・勾配・位置情報などをもとにルート上の勾配を先読みし、AIが走行負荷を予測し最適なハイブリッド制御を行う新ハイブリッドシステムを開発しました。これにより、高低差による運動エネルギーを効率的に回生し活用することで、大型トラック特有の走行条件における燃費効果を実現しています。
安全面では、衝突被害軽減ブレーキや出会い頭事故防止の安全装備「サイトアラウンドモニターシステム」をはじめ、数々の先進安全技術を標準装備しています。

ハイブリッド大型トラック「プロフィア」
≪フラットフォーマー(FlatFormer)≫
日野自動車は、自動運転に対応した1台の動力プラットフォームで複数のボディー(デリバリーユニット)を輸送できるこれまでのモビリティの概念を変えるフラットフォーマー(FlatFormer)を出展しました。
フラットフォーマーは、走行用メインバッテリーと非接触給電ユニットが備えられています。フロントの2輪にはモーターやサスペンション、ステアリング機構を一体化したユニットが組み込まれ、モーターとサスペンションを一体とした2軸の小径ユニットが後部に配置された低い床だけの自動車です。
フラットフォーマーをベースにした車両のボディー(デリバリーユニット)を変更することで、多種多様なサービス空間や機能に対応でき、例えば朝、昼、深夜で異なるボディーを載せて活用すれば、1台のフラットフォーマーの稼働を最大化して効率的な活用が可能となります。また、人やモノ(商品)の移動だけでなく、ケータリングの提供や医療サービス、オフィススペースなどのサービスを提供できるモビリティとなります。
フラットフォーマー(FlatFormer)の主要スペック
車名 |
仕様 |
寸法 (全長×全幅×全高 mm) |
4,700×1,700×335 |
駆動方式 |
6×6 |
バッテリー形式 |
リチウムイオン |
バッテリー容量 (kWh) |
50 |
モーター出力 (kW) |
170 |
出典:日野自動車HP
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フラットフォーマー(FlatFormer) |
デリバリーユニットの搭載状況 |

デリバリーユニットの搭載イメージ
◆◆三菱ふそうトラック・バス◆◆
≪燃料電池小型トラック「Vision F-CELL」≫
三菱ふそうトラック・バスは、前回(第45回東京モーターショー2017)の東京モーターショーで出展された量産型の小型電気トラック「eCanter」に続き、燃料電池から供給される電力でモーター走行する燃料電池小型トラック「Vision F-CELL」を出展しました。燃料電池は、水の電気分解の原理を利用して、燃料として供給された水素と大気中の酸素を化学反応させて電気を起こす「水」しか排出しないクリーンな発電システムです。
電気トラックは、一充電当たりの航続距離が短く重いバッテリーを搭載しているので積載量が減り、充電時間もかかるという課題があります。Vision F-CELLは、燃料電池の電力で航続距離が長くなり、水素の充填時間は約2分で完了し、従来のディーゼル車と遜色ない運用が可能です。
Vision F-CELLの主要スペックは、モーターの最高出力135kW、車両総重量7.5トン、最大積載量3トンです。また、燃料電池システム(中国メーカーRe-Fire製)の発電力は46kWで、走行距離が200k〜300km以上の走行可能なコンセプトカーです。

燃料電池小型トラック「Vision F-CELL」
◆◆UDトラックス◆◆
≪ハイブリッド実験車両「雷神」≫
UDトラックスは、電気エネルギーの力を象徴する雷の神「雷神」から着想を得たハイブリッド実験車両「雷神」を出展しました。
雷神は、2030年までのフル電動トラックの量産化に向けて、エネルギー効率や積載量、航続距離、静粛性を最大限に確保したゼロエミッション大型トラックの技術開発の取組みの一環として大型トラック「クオン」をベースに開発されました。パワートレインはGH8型直6エンジン+モーターの組み合わせです。荷台を架装しない状態で展示されているので、搭載されたリチウムイオン二次電池やハイブリッド用冷却システムなどを確認することができます。

ハイブリッド実験車両「雷神」