■海外情報

★スウェーデンにおける自動車用先進燃料の動向
《AMF-TCP(自動車用先進燃料技術連携プログラム)2019年間報告書より》


 

出典:https://www.iea-amf.org/(英語ページ)

◆◆スウェーデン◆◆

自動車用先進燃料普及の背景及び政策
 スウェーデンの環境政策の全体目標は、国境を越えた環境と健康の問題を増加させることなく、主たる環境問題が解決された社会を次世代に引き継ぐことができるようにすることです。スウェーデンは、世界初の化石燃料を使わない福祉国家の一つになることを目指しています。これを達成するためには、運輸部門の化石燃料依存を打ち破る必要があります。運輸部門の総エネルギー需要を削減し、残りのエネルギーを再生可能で持続可能なものにするなど、いくつかの対策が必要となっています。
 2017年に、新しい気候政策の枠組みが承認されました。長期的な気候政策目標は、遅くとも2045年までにはスウェーデンの温室効果ガス(GHG)の正味排出量をゼロにすることです。より正確に言えば、長期的な気候政策目標は、スウェーデン国土における活動からの排出量が1990年の排出量と比較して少なくとも85%削減されることを意味しています。正味ゼロ排出量を達成するために、柔軟性のある対策が含まれています。運輸部門では、2010年と比較して2030年までに少なくとも70%の排出量(国内航空旅行を含まない)の削減も適用されています。
 2018年半ば、スウェーデン政府はボーナス・マルスシステムを導入しました。これにより、二酸化炭素(CO2)排出量が比較的少ない環境に適合した車両には、購入時にボーナスが与えられ、CO2排出量が比較的多い(95 g / kmを超える)車両は、最初の3年間はより高い税金(マルス)の対象となります。このシステムには、乗用車、小型バス、小型トラックが含まれます。ボーナスは最大SEK60,000($ 6,448 US)に制限されています。
 2018年半ばに導入されたもう一つの重要な対策は「削減の義務」であり、これにより燃料供給者がバイオ燃料を導入することで、ガソリン及び軽油の販売量からのGHG排出量を削減する義務を負うことになりました。2019年の削減義務は、ガソリンが2.6%、軽油が20%でした。その義務は時間経過とともに増加し、2030年に40%削減することが目標になります。削減義務システムに含まれるバイオ燃料は、化石燃料と同じエネルギー及びCO2課税の対象となり、削減義務スキーム外のバイオ燃料は減税となります。

自動車用先進燃料の動向(統計情報)
 1990年より、乗用車の台数は約350万台から490万台に増加しましたが、乗用車からのGHG排出量は、1990年から2007年の間1,300万トンとかなり安定しています。しかし、2007年以降の排出量は顕著に減少し、2018年は約1,000万トンになりました。排出量が減少した主な理由は、新車のエネルギー効率改善と自動車用再生可能燃料の使用です。
 同時期のガソリン車とディーゼル車以外の車両の増加は緩やかでした。2018年末の代替燃料車の台数は約32万台でした(図1)。さらに、HVO100(水素化植物油100%)を燃料とするメーカー承認の従来ディーゼル車のシェアが増加しています。ただし、現在、このシェアの大きさに関する利用可能な統計情報はありません。

図1 先進燃料乗用車台数(2006〜2018)

 代替燃料自動車の台数は、総乗用車台数(HVO100のディーゼル車を除く)の7%に相当します。小型商用車及び重量車については、それぞれ2%及び1%です。しかし、バスについてはガソリンあるいは軽油以外の登録車両のシェアは、ちょうど30%以下です。さらに、ディーゼル登録バスにおけるHVOの使用は広範囲にわたっています。
 スウェーデンでは、フレックスエタノール車はほとんど代替燃料とガソリンの共用車両であり、2018年に販売されたエタノール燃料(E85)は、エネルギー換算で全輸送用燃料のエネルギー量の1%未満しかありませんでした。非常に広範囲で、フレックス燃料車はエタノール燃料ではなくガソリンで給油されています。メタン燃料自動車の台数は、保有台数の約1%に相当する4万台程度で停滞しています。絶対数は少ないですが、過去数年間で充電可能車両の台数は実質的に増加しました。
 スウェーデンにおける輸送用の再生可能バイオ燃料の利用は、17.5テラワット時(TWh)あるいは2018年に販売された輸送用燃料の22%に相当します(図2参照)。スウェーデンにおける2018年中の再生可能燃料のほぼ60%は、水素化植物油(HVO)及び脂肪酸メチルエステル(FAME)の軽油への低濃度混合でした。軽油における再生可能燃料のシェアは平均で22%でした。スウェーデンのマーケットで販売されたいくつかのディーゼル関連製品では再生可能なもののシェアは50%でした。


図2 2018年における道路輸送部門の燃料消費量(TWh)

 HVOがスウェーデンの市場に導入されたときは、スウェーデン、フィンランド及び米国産の粗トール油から製造されていましたが、HVOの需要が増加したので、原料や原産国数が増加しました。現在、原料は、パーム脂肪酸留出物(PFAD)、食肉処理場の廃棄物、粗トール油、とうもろこし及びパーム油(多い順)となっています。
 図3に示したように、HVO原料の大部分は輸入されています。2018年のスウェーデンにおけるHVO使用における平均GHG排出量は1MJあたり8.8グラム-CO2相当です。FAME(Fatty Acid Methyl Ester:脂肪酸メチルエステル)の場合、32.1g-CO2/MJに相当します。FAMEはほとんど菜種油から作られます。菜種油は、低温特性(例えば曇り点)の観点で他の多くの植物油と比較し北欧諸国に適しているより好ましい原料です。


図3 2018年にスウェーデンで消費されたHVO原料の国別割合

実証研究
 スウェーデンエネルギー庁は、いくつかのエネルギー関連研究、開発及び実証プログラムを行っています。
・エネルギー・環境
 このプログラムは、エネルギー効率の向上、再生可能燃料への移行、地域の環境影響の低減、及びグローバルな視点でスウェーデンと英国の自動車産業の競争力を強化する可能性のある分野での自動車関連の研究、革新、開発活動に焦点を当てています。
・2018年から2023年までの輸送効率の高い社会のためのシステムレベルでの研究プログラム
 このプログラムは車両またはエンジンの技術開発に焦点を当てたプロジェクトは対象としていません。
・2015年から2021年の間の高エネルギー効率車両
 自動車用先進燃料並びに道路車両及び建設車両等の非道路車両が対象となります。
・バイオ燃料プログラム、熱化学プロセス及びバイオ化学
・再生可能燃料及びそのシステム(2018年から2021年)
 運輸用再生可能燃料に関するスウェーデンエネルギー庁及びスウェーデン知財センターの共同プロジェクト
・内燃機関研究能力のある3研究所及び触媒研究能力のある1研究所
 それらの研究所は、自動車業界、大学、及びスウェーデンエネルギー庁と共同研究を推進しており、各プロジェクトは事業費の三分の一が補助されます。
・スウェーデンガス化センター
 このセンターは、バイオ燃料製造のための大規模ガス化に焦点を当てているほか、他分野のバイオマスガス化に関する事業も行っています。
・広範囲の技術をカバーするパイロット事業や実証事業

今後の動向
 2017年スウェーデン議会は以下の目標を伴う新しい気候法を採択しました。
 航空を含む国内輸送分野からの排出量は、2010年比で少なくとも2030年には70%削減します。遅くとも2045年までには、スウェーデンは大気中へのGHG発生を正味でゼロにします。
 2010年比で2045年には正味でCO2排出量をゼロにするというスウェーデンの目標は非常に高いです。自動車台数の更新比率を考慮するとこれらの目標を達成するためには自動車用先進燃料の果たす役割は非常に大きくなっています。

補足情報 ・スウェーデンエネルギー庁, http://www.energimyndigheten.se/en/(英語ページ)
・運輸用再生可能燃料に関するスウェーデン知財センター, f3 centre | ett nationellt centrum for samverkan(スウェーデン語ページ)

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